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政治思想、哲学、格闘技、時事問題について、つれづれ書いています…(more)

▽作者:Hermeneus

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Friday, February 22, 2008




mccain
マケイン上院議員
共和党、民主党共にようやく決着を見つつある2008年米大統領予備選。共和党の候補はほぼジョン・マケインで決まりだろう。このマケイン上院議員、自身のボクシング好きが高じてか、総合格闘技(mixed martial arts)に対したいそう敵対的である。

「ボクシング好き」が総合嫌いに繋がるというのは、日本人の感覚的にはあまりピンと来ないかも知れない。アメリカでは総合格闘技をボクシングと競合する新興の格闘観戦競技と見る向きが多い。総合格闘技が流行るようになれば、ボクシングが廃れるのではないかという懸念があるのだろう。プロボクサーもボクシング統括団体関係者も一般に総合格闘技に対する見解は辛辣である。アメリカで格闘技の興行を行う際には州毎にあるアスレチック・コミッションの認可を得なければならないのだが、昔からボクシングがこれを牛耳ってきているためか、ボクシングより過激なルールを採用している総合格闘技に対しては何かと要求が厳しく、色々と苦労させられてきた。その点、グラウンドにおける馬乗りパウンドの許可に関しては後発ながらも、猪木の格闘技世界一決定戦、UWF、修斗、K-1により下地が整備されていた為か総合格闘技がすんなり大衆にも受け入れられた日本とは対照的である。

話をマケインに戻す。マケインは、総合格闘技は野蛮な「human cockfighting(人間闘鶏)」であるとして、その禁止運動の先陣を切っている。
A decade ago, Sen. John McCain (R-Ariz.) and other legislative strongmen had choked the Ultimate Fighting Championship (UFC) into near-submission. Nearly 40 states banned mixed martial arts events. The cable industry, over which McCain exercised considerable influence as the chairman of the Senate Commerce Committee, took note too. In 1997 TCI and Time Warner stopped carrying UFC pay-per-view events on their systems. Semaphore Entertainment Group, the company that produced UFC, nearly went bankrupt. ("Bleeding into the mainstream: how John McCain popularized human cockfighting," Reason, October, 2007)

おかげで1990年代後半には40近くもの州で総合格闘技の 興行は禁止され、UFCのケーブルテレビ放送(PPV)も打ち切られてしまった。その後、UFCは何とか人気を取り戻し、現在ではメジャーケーブル局で人気リアリティ番組The Ultimate Fighter)を持つまでになっているが、マケインは未だにアメリカの総合格闘技ファンの間では蛇蝎のごとく嫌われている。
Republicans or democrats, American MMA athletes and fans already has a candidate that won’t be voted for president. Candidate on next election, the republican John McCain fought for a long time against MMA at USA. While MMA was growing at United States and all over the world, John did whatever he could to prohibit events like UFC. For one moment, the UFC had to be transferred to Alabama by plane, with octagon and everything, to be done. John McCain will have to face some “strong” opponents at presidential run. ("John McCain, candidate against MMA," tatame.com, February 18, 2008)

日本としては伝統的に親中の民主党よりも共和党に政権を維持してもらいたいところなのだろうが、総合格闘技ファンにとってはマケインに大統領になられると何かと困ったことが起こるやも知れない。

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Friday, February 15, 2008




rudd
捕鯨問題で日豪が仲違いすれば日豪安保共同宣言を懸念してる中共にも願ったりかなったり。
オーストラリアが日本の捕鯨に強く反対しているのに対し、日本側からの反論として「他にもノルウェーなど商業捕鯨推進国はあるのに、なぜ日本ばかり目の敵にするのか。人種差別だ」「オーストラリア人は鯨を殺すなというが、自分達も牛や豚を殺して喰っているではないか。ディンゴなどの野生動物を絶滅に追いやっているではないか。おかしいだろう」という意見が暫し聞かれる。反捕鯨運動に対する批判はまことに結構なことであるのだが、この種の反論に果たして意味があるのかと少々疑問に思う。

まず押さえておくべきなのは、オーストラリアでも皆が捕鯨に強く反対しているわけではなく、そして反対している者の多くは左に傾いている人間だという点である。
Marc Morano: "The environmental group Friends of the Earth, in attendance in Bali, also advocated the transfer of money from rich to poor nations on Wednesday. 'A climate change response must have at its heart a redistribution of wealth and resources,' said Emma Brindal, a climate justice campaigner coordinator for Friends of the Earth."

Forbes, November 11, 1991: "In 1985 French government agents, attempting to thwart a Greenpeace obstruction of nuclear testing, blew up Greenpeace's ship Rainbow Warrior in Auckland, New Zealand. Photographer Fernando Pereira, who was on board at the time, was killed.... But the martyrdom was somewhat sullied by allegations that Pereira was allied with terrorists. A German intelligence official says that German and Dutch intelligence agencies had files on Pereira describing him as a "contact" of a political front man for the terrorist Second of June Movement gang, and as a contact with the Soviet KGB in planning antinuclear missile protests in Western Europe.... It seems clear that Greenpeace's benign image and name, so redolent of goodness, are a cover for a disdain for capitalism. Not surprisingly, international board member Susan George and military expert William Arkin used to work at the notoriously leftist Institute for Policy Studies."

George Reisman: "The only difference I can see between the green movement of the environmentalists and the old red movement of the Communists and socialists is the superficial one of the specific reasons for which they want to violate individual liberty and the pursuit of happiness. The Reds claimed that the individual could not be left free because the result would be such things as "exploitation," "monopoly," and depressions. The Greens claim that the individual cannot be left free because the result will be such things as destruction of the ozone layer, acid rain, and global warming. Both claim that centralized government control over economic activity is essential. The Reds wanted it for the alleged sake of achieving human prosperity. The Greens want it for the alleged sake of avoiding environmental damage.... [And in the end, both] the Reds and the Greens want someone to suffer and die; the one, the capitalists and the rich, for the alleged sake of the wage earners and the poor; the other, a major portion of all mankind, for the alleged sake of the lower animals and inanimate nature."

オーストラリアに限らず、日本でもアメリカでも、アニマルライツや環境保護といった運動に関わっているのは昔学生運動に関わっていたり共産主義に傾倒していたような人間が多い。それで、上述のような批判を日本の左派に対して行った場合を考えてみれば、その不毛さがよく分かる。

例えば、日本のプロ市民がアメリカの原爆投下やイラク侵攻、人種差別を批判していて、それに怒ったアメリカ人が「日本はもっと酷い南京大虐殺やっただろう」「日本も在日朝鮮人を差別してるだろう」などと返したとする。プロ市民は勿論そんなことを言われてもこたえはしない。「ああ、その通りだな」と言うだけだろう。普段から「自虐」と呼ばれるほどに自分達でも自国の政府や体制を糾弾しているのだから、外国人がそれに賛同して同様な批判をするならむしろ願ったりかなったりである。

オーストラリアの左翼も当然、アボリジニーの強制隔離に関する政府謝罪請求運動などにも積極的に関わっているわけで、同じオーストラリア人でも白豪主義を支持していた層とは全く異なる。そういう連中に対し「オースオラリアは人種差別国家だ」と指摘しても、そうはこたえない。他の絶滅危惧種の保護にも当然積極的なわけで、牛豚鶏のfactory farmingに強く反対するものもいれば、ベジタリアンもいる。そういう連中にディンゴはどうだなどと言っても意味は無い。

この点で、オーストラリアの反捕鯨運動は中国や韓国の反日運動と本質的に異なる。中国や韓国で歴史教科書や戦後補償・謝罪問題に関して声を荒げているような連中は、もっぱら愛国心、民族主義に駆られてやっているので(左右を問わず)、「おまえらもチベットを蹂躙しているだろう」「ベトナム戦争で民間人を虐殺しているだろう」などと指摘すると途端に弁解がましくなる。日本の自虐左翼のように「まったくその通り、嘆かわしい事だ、もっと責めてくれ」とはいかない。

では何故に日本だけが反捕鯨運動において目の敵にされているのかと言えば、それは日本の捕鯨が大規模な商業捕鯨であるからに他ならない。つまり、日本の捕鯨には資本主義が絡んでいる故に、マルクス主義を引きずってる連中が問答無用で極度に反発している。だからエスキモーが伝統文化として細々と捕鯨をやってるのは大目に見る。無論、日本の捕鯨も伝統文化であることに変わりはなく、商業化されたからといって文化でなくなるわけではないのだが。

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Monday, February 4, 2008




rock
Rock Obama -- 結構似ているが、ザ・ロック共和党支持らしい
スーパー・チューズデイ(2月5日)をいよいよ明日に控えて、いっそうの盛り上がりを見せてている米大統領予備選挙。特に注目は民主党予備選で、当初からの有力候補ヒラリー・クリントンと、アイオワでの勝利以来、オプラエドワード・ケネディらの支持を受けて勢いをつけ猛追している若手アフリカ系上院議員バラック・オバマとの一騎打ちの様相を呈している。そのオバマがジョン・F・ケネディを彷彿とさせるモチベーショナルなスピーチで話題になっているらしい。
民主党の大統領候補指名レースで、ヒラリーとデッドヒートを繰り広げているオバマ。評判なのは、彼の演説のうまさである。J・F・ケネディやキング牧師の“再来”などといわれているのだ…(日刊ゲンダイ2008年2月3日「オバマ演説 ここがスゴイ!!」)

オバマの演説はYoutubeでいろいろ見る事が出来る:2004年民主党大会その2原稿)、2008年1月アイオワ勝利演説。米メディアでも概ね好評で(特にリベラル側言論において)、中でもMSNBCのクリス・マシューズの指摘が興味深い:
If you compare the two speeches, Rachel, it seems to me that Barack gave a big picture speech, a heroic speech in many ways about America today. I look at Hillary Clinton’s speech and it looked like a bunch of buttons were being pushed, the same old, you know, focus group approved buttons. Here’s—say the word, say the word, say the word and you’ll get the conditioned response. And it certainly doesn’t work for people like me, who are watching this thing year after year after year. I just think it’s manipulative. Whereas his appeal is heroic. It’s different. It’s just different in quality than hers. (Hardball January 3, 2008. Youtube動画リンク)

ヒラリーのスピーチは他の候補や今日の多くの政治家同様、フォーカスグループ向けにアピールするキーワードを並べたてるだけ(例えば反戦派の支持を得る為にイラク戦争反対の意を表明したり、中産階級の支持を得る為に中産階級の減税を約束したり)のつまらないものであるのに対し、オバマはより大きな、アメリカという国のビジョンを語っている。ブッシュ政権の古いやり方からの脱却、Changeをスローガンに掲げている民主党の候補としては、旧来の政治家の訴え方をしているヒラリーはあまり魅力的ではない、と。この指摘は、ジョン・F・ケネディのニクソンとのテレビ討論における評価とも通じるものがある。

さらに、アフリカ系アメリカ人のハーバード大学ロースクール教授ランドール・ケネディが、オバマが旧来の黒人指導者と異なる点を指摘している:
I'm really exited by him because I feel comfortable. He is not like those others, like Al Sharpton, Jesse Jackson. I can be comfortable with him, he's not rubbing my face constantly, talking about slavery, segregation, and all that.... I'm made very uncomfortable by Al Sharpton and made very uncomfortable by what I perceive to be the racial opportunism of Jesse Jackson, so forget them. I pull a lever for this guy though. (Randall Kennedy: In Conversation with Christopher Edley, Jr. January 16, 2007. Youtube動画リンク)

曰く、アル・シャープトンやジェシー・ジャクソンなどの旧来の黒人指導者と異なり、オバマは事ある毎に奴隷制だの人種隔離だのといったことを口にしない。アメリカ大統領になれるようなアフリカ系アメリカ人とは、叩かれても過剰に反発したりせずに、ジャッキー・ロビンソンのように地道に自らのなすべきことをなして、身をもって範をたれるような人間だろう、オバマはそういう種の人間だ、と。

民主党の若手上院議員、少数派出身という共通する境遇から、何かとケネディと比較されるオバマだが(ケネディはカトリックのアイルランド系で、特に宗教が1960年大統領選でネックになった)、大きな違いが一つある。それは、アフリカ系アメリカ人であるオバマが二大政党の大統領候補の座を競う有力候補であるという事実自体が、ケネディ、ジョンソン政権下において押し進められた公民権運動の賜物であるという点である。もしオバマが大統領になれた暁には、彼が取り組むことになる問題はイラク戦争や社会保障などであって、オバマ自身が再び国内人種問題に取り組むことはない。オバマは長年の公民権運動の成果を土台にして、そこから更に先へと飛躍していくことになる。

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Sunday, February 3, 2008




yong
Sushi police
昨年、色々物議をかもした「正しい和食」認証制度が、今年から始動するらしい。
『正しい和食』認証制度に米メディア猛反発(産経新聞2006年12月10日):「日本の農水省が世界にある和食レストランを「正しい和食」と認証する新制度の導入を検討していることに、和食ブームが続く米国のメディアが次々に反応している。ワシントン・ポスト紙が「国粋主義の復活」と報じれば、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は「日本がスシ・ポリスを派遣する」と揶揄(やゆ)、巻き寿司の「カリフォルニア・ロール」発祥の地ではロサンゼルス・タイムズ紙が「論争の火種になる恐れがある」などと警告し、さながら“日米食文化摩擦”の様相だ。農水省は認証制度の検討について「食材や調理法が本来の日本食とかけ離れた料理を提供している日本食レストランが増えているため」と説明。現在全米に「日本食」を掲げるレストランは9000店あり、10年間で2.5倍に増加。このうち日本人、日系人がオーナーの店は10%以下に過ぎず、経営者の多くが中国、韓国などアジア系の移民という…「米政府がアフリカや香港や韓国でアメリカ料理の認証をやろうとするだろうか」という韓国系米国人の和食店オーナーの声を紹介している。」

"Japan to certify cuisine but no 'sushi police'" (AFP, January 29, 2009): "TOKYO (AFP) - Japan launched a campaign Tuesday to certify authentic Japanese food overseas, but insisted it was only promoting its cuisine rather than setting up a 'sushi police.'... 'It's important to share the heart that goes into authentic Japanese food with chefs around the world, but we can't force them,' said Yukio Hattori, a board member of the certification body and president of Hattori Nutrition College. 'We also have a history of fusion dishes between Japanese and French, Italian or Chinese food,' Hattori, a noted food critic, told AFP. 'I think we should aim to have two wheels -- one is authenticity and the other is the local quality of Japanese food in each country,' he said."

「国粋主義の復活」("resurgent Japanese nationalism")とはひどい言い様だが、そもそもニセ寿司レストランも「日本食」というネームバリューを利用して大金ぼったくっているわけだろう。自分の料理に自信があるのなら、「日本食」だのといったブランドに頼らずに、自分の腕と食材だけで勝負すれば良い話。(料理名には自分の名前を冠すれば良い。)それを他の人間がさらに押し進めて認証制度を始めたからといって、自身もこれまで日本食ブランドを利用してきたのだから、文句を言えた筋合いじゃないだろう。

著作権だの商標権だので年がら年中訴訟起こしてるよりはよっぽどマシだ。イタリア料理やフランス料理が同じような事を日本でやりだしたら、逆に日本人は喜びそうではある。特に不味いチーズなどの乳製品やコンビニパンは何とかしてほしい。

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Monday, January 21, 2008




cheetos
Flamin' Hot Cheetos
Flamin' Hot Cheetosという日本では売ってないチートスの激辛バージョン(フリトレー社製)。これが文字通り「病み付き」になるほどウマい。どれくらい「病み付き」かっていうと、アメリカの小学校で子供が食べるのを禁止するほど(NPR, "Kids Love Hot Cheetos But Schools Hate Them," May 9, 2006)。

まず、色が毒々しく、いかにも健康に悪そうな人工着色料的な赤さをしている。袋から直に食べているとその色が手にベットリと付く(ほんと層になるくらい)。

味も激辛だから、お腹が弱い人が食べれば下痢する公算高し。で、トイレに行くとチートスのおかげで便までも真っ赤な尋常じゃない色に染め上げられていて、便器の中はまさに地獄絵図。予備知識無くその様を最初に見れば、大腸ガンか何かとんでもない病気にでも突然かかったんじゃないかと心配になること受け合い。

ベースのチートスも、コーンを油で揚げてチーズ加えた菓子だから、コレステロールの塊のようなもの。どう考えても体によろしくない。

そして何より病み付きになるほどの「うまみ」がある(辛いだけなじゃい)。この点が日本のカラムーチョやハバネロなどとは比較にならない。それで、健康に悪そうと思いながらもやめられないのである。

米フィラデルフィアにあるモネール化学感覚センター(Monell Chemical Senses Center)の食品嗜好専門科(food preference expert)であるマーシー・ペルチャット氏(Marcy Pelchat)によると、このチートスを食べると三叉神経が刺激され、それがもたらす不快感を押さえるためにエドルフィンが分泌され、ハイになってしまうとか何とか。まるで非合法ドラッグのような言い様。

日本では販売していないので、国内で入手するにはアメリカから直接取り寄せるか、アメリカの食品を扱ってる在日米国人向けスーパーなどで購入するしかない。アメリカなら普通のコンビニでも売ってる(ただ、レギュラーのチートスと比べると置いてない店も多い)。

追記:ドリトス版もあって、こっちも負けず劣らず美味かった。

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Friday, January 18, 2008




マス教授
Mathだけにマス教授
どうもGoogleで「アメリカ ゆとり教育」を検索するとこの記事が上位にくるらしい。Youtubeのビデオ貼付けておくだけというのも何なので、内容の要約を簡潔に書き出してみることにする。

登場するのはワシントン大学大気科学部のクリフ・マス(Cliff Mass)教授。ゆとり教育に嘆いている日本の大学教授と同じようなことを、このマス教授も嘆いている。それで先の記事の題名にも「ゆとり教育」と入れたのだけれど、マス教授が批判しているのは主にワシントン州における数学カリキュラムについて(アメリカには日本の文科省に当たる省庁は無く、教育行政は州ごとに行われている)。これが「reform math」「constrictivist math」あるいは「fuzzy math」(ファジーな数学)などと呼ばれている。

マス教授はワシントン大学で25年間、天気予報や大気の数値的シミュレーションの研究をしていて、学部生向けに大気科学の入門コースも教えている。10年くらい前から、ワシントン大学の新入生における数学能力が著しく低下してきていることにマス教授と大学の同僚達が気づきはじめた。今の学生は、80年代の学生なら苦もなくこなしていた単純な代数や分数の問題を解くのも困難になりだしている。結果、教授の大気科学コースはレベルを落とさざるをえなくなってしまう。

学力低下の客観的証拠の一つとして、ワシントン大学で1990年から1999年の間に行われた前・微積分能力判定試験(pre-calculus assessment test)において、平均点がどんどん落ちて来ていることが挙げられる。あまりに点数が悪くなりすぎてしまったので、1999年からはより簡単なテストに変えるはめに。

マス教授が大気科学入門コースをとっている生徒に中学レベルの数学テストを課してみたところ:

  • 2-2 = 1/4の正答率は45%。

  • コサインの定義が分かるのは64%。

  • y= x (1-x)の方程式が解けるのは14%。

他にも:

  • ワシントン州の大学生の30%が補修数学コースを必要としている。

  • ワシントン州における数学家庭教師産業の収益は1994年から2004年の間に340%アップ。

  • ワシントン州の高校生の40%がWASL (Washington Assessment of Student Learning、ワシントン州の学力検定試験)の数学(ごく基本的なもの)を2回受験してもパスできない。

  • 数学能力を要求される技術職を外国人にどんどん取られていってる。

などの現象が起こっている。

fuzzy math
ワシントン州に限らず全米で問題になっている。これはニュージャージー州の小学校3年生用のreform math問題:「クローゼットにペーパークリップの入った箱が25箱あります。それぞれの箱にはクリップが100個入っています。私は1つの箱からクリップを50個取り出しました。クローゼットには何個クリップが残っているでしょう?」「貴方がこの問題をどうやって解いたか示してください。貴方の考えを言葉でも説明してください。例えば、貴方はどのようにして問題をその方法で解けると分かりましたか?」(New York Times, June 14, 2007)「25*100-50=2,450」と数式を書くだけでは駄目らしい。
原因は何なのか? 最近の生徒の知能が劣るというわけではない。むしろ新入生の高校時代の成績(GPA)は上がってきている(アメリカの大学入試においては高校の成績が重きをなす)。数学力のみ落ちてきている原因は、1989年から導入されたThe National Council of Teachers of Mathematics(NCTM、全米数学教師協議会)の学習指導要領にあるとマス教授は言う。これは、生徒が先生に一方的に教えられるのではなく、生徒が自ら数学の原理を発見するように奨励し(ディスカバリー・アプローチ)、長除法(割り算の筆算、余りの数などの計算過程を書きながら計算を進める方法)などの確立した算法はないがしろにして計算機の使用を勧め、練習を重ねて習得するということをさせず、代数・幾何学を軽んじている。

このNCTM要領に沿った教科書が1990年代よりアメリカ全土で採用されはじめる。ワシントン州他で広く使用されているNCTM準拠の代表的教科書:TERC InvestigationPearson Connected Math Program (CMP)McDougal-Littell Integrated MathInteractive Math Program (IMP)Everyday Math。この全ての教科書がNCMT要領の欠点を共有している。代数・幾何に関する多くのトピックが欠けており、生徒は分数、等式の操作、三角関数、基本的な計算法を習得できない。ワシントン州などではNCTM要領を反映するようにカリキュラムも修正された。

これが教授自身の息子の数学教育にも悪影響を与えることになってしまう。教授の上の子が中学、高校で使った数学教科書はMcDougal-Littell Integrated Math。この教科書は、様々なトピックを狂ったように行ったり来たりするため、生徒が一つも満足に習得できない。内容は一貫性を欠き、論理的な発展学習が不可能。その内容はあまりに酷く、教授は心配になって夜には子供といっしょに勉強し、家庭教師を雇い、公文式に通わせたという。

下の子は高校でInteractive Math Program (IMP)を使用。この教科書の中には数式がほとんど出てこない。生徒が自分で数式を発見するようになっていて、その中身は「観覧車から飛び降りてみる」などといったテーマに沿って書かれている。重要な数学的原理をスルーしていて、息子はこれではやりがいが無いと感じ、もっと学びたい、本当の数学を学びたいと嘆いたという。

National Research CouncilがNCTMプログラムの効果を検証するために委員会を設立。K-12 (幼稚園から高3年まで)の数学教育の質を査定するため、19のNSF(National Science Foundation)主導のNCTMプログラムについて147の研究を行った。結果は、同カリキュラムの有効性を示すデータはいっさい無し。

William Hook、Wayne Bishop、John HookがEducational Studies in Matics誌で発表した研究によると、カリフォルニア州がreform mathから数学テスト上位国のカリキュラムを反映したものに変えたところ、生徒の成績が格段に向上したという。学力向上は特に社会的に恵まれない生徒(less advantaged student、貧困層の子弟)の間で顕著であったという。

フォーダム財団(Fordham Foundation)がアメリカ中の数学カリキュラムを調査したところ、ワシントン州はF(落第、不可)ランクだった。

現行のワシントン州の学習指導要領はお粗末に書かれたもので、必要以上に分量が多く、時に数学と何の関係もないことにまで言及している。

ワシントン州における学生の数学力の低下はreform math導入と共に始まっており、これは偶然ではない。

では、どうやってこの惨事(disaster)を解決すべきか?:

  1. 国際数学試験TIMSS(Trends in International Mathmatics and Science Study)などで好成績を残している国で使われている、国際的に競争力のある数学指導要領の導入。カリフォルニア州が1990年代初頭にreform mathを導入して破滅的な惨事を招いた後、1998年よりこれを行い、今ではポジティブな結果を出し始めている。

  2. 数学者、保護者、数学教育者からなる独立した監視委員会を設置して、新しいワシントン州数学指導要領を作成。各地域における教科書採択についても監視するカリキュラムを作成。この委員会は、reform mathの主要な支持者でロビイストであるOffice of the superintendent of Public Instruction(OPSI)からは完全に独立したものとする。

  3. Iowa Test of Basic Skills (ITBS)のような、全国基準の学力査定を再設置。現行のWASLは非常に高価で、致命的欠陥があるので、中止。他の州の生徒の出来と比較できる試験が必要(WASLでは無理)。

ということで、みんなでワシントン州議会に働きかけましょう、と教授は訴えている。

さらに詳しい情報はwheresthemath.comを参照とのこと。

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Monday, January 14, 2008




アメリカでは1990年代初頭に始まったらしい。


このワシントン大学大気科学のクリフ・マス(Cliff Mass)教授は、学校の数学の授業があまりに酷すぎるから、自分の息子を公文に通わせていたらしい。公文ってアメリカにも進出してるのか、とふと思いウィキペディアで調べてみたら、なんと世界最大の数学塾とのこと。

続き:アメリカのゆとり教育(続)

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