[毎日新聞1998年1月25日]今日のニュース:
<早大探検部>OB有志、週刊誌に首相発言「糾弾」の意見広告
南米アマゾンの川下りに挑戦中の早稲田大学探検部員2人が、ペルー国軍兵士に殺害された事件に関する橋本龍太郎首相のコメントに対し、探検部OB有志が26日発売の「週刊ポスト」誌に、「糾弾」の意見広告を掲載する。
OBが問題にしている首相発言は昨年12月28日午後、首相番の記者にコメントしたもので、「ペルーはMRTA(トゥパク・アマル革命運動)だけでなくほかにもテロ組織があって、当然政府軍との間でピリピリしている。十分事前に準備ができていたのか。冒険好きな僕からしても疑問に思う」との部分。
これに、作家の船戸与一、西木正明の両氏や竹内謙・鎌倉市長ら探検部OB計47人が反発。意見広告は、「惨殺が勤務中の国軍兵士による組織ぐるみだったことの意味をまるで分かっていない。事前準備うんぬんという次元をとっくに超えたものだということに気づこうともしない。橋本龍太郎がまず行うべきだったのはペルー政府に対する毅然(きぜん)たる抗議のはずなのである。それなのに彼は2人の死者に唾(つば)するような説教ごかしの最低の談話を発表した」などとして、「内閣総理大臣を辞任せよ」と結んでいる。
筆者の船戸氏は「ルクソール事件はエジプト政府に対峙(たいじ)するイスラム過激派組織の犯行だったが、日本政府は遺憾を表明し、エジプト政府も謝罪した。今回は過激派ではなく国軍の手で日本の若者が殺害されたもので、ペルーの責任はより問われるものだ。米国人や英国人が同じような事件に巻き込まれれば米英のトップは黙ってはいまい。これが、わが国のトップのお寒い実態だ」と話している。
事件は昨年10月17日発生。アマゾン川流域の監視所に立ち寄らずいかだで通過した探検部所属の学生2人を、監視所の兵士が連行。監禁、殺害のうえ現金1200ドルを強奪し、遺体をバラバラにして監視所付近に投棄した。事件では監視所を指揮していた小隊長ら兵士16人が逮捕されている。 【萩尾 信也】
[毎日新聞1998年1月27日]今日のニュース:
<探検部員殺害>橋本首相が発言釈明「犠牲者に説教本意でない」
橋本龍太郎首相は27日、昨年12月のペルーでの早大探検部員殺害事件を「準備不足」と発言したのに関連して「冒険には危険が伴うが、その危険は事前に準備をして最小限にとどめる必要がある、との趣旨。犠牲者に説教を行うつもりではなく、不快な思いをされたなら本意ではなかった」と釈明した。
探検部OBから猛反発が出ているのに配慮したもので、記者団に登山家としての事件の感想を聞かれたのに対し「本当に残念なこと。(事実関係が)はっきりしないので論評はできない」としながらも、「ペルーはテロ組織があって政府軍との間でピリピリしている。十分事前に準備できていたのか冒険好きな僕から見ても疑問に思う」と語った。
準備不足発言に対しては、作家の船戸与一さんら早大探検部OBらが反発、今週発売の週刊誌に「惨殺は勤務中の国軍兵士による組織的な犯行で事前準備うんぬんを超えたもの。首相が行うべきはペルー政府に対する毅然(きぜん)たる抗議なのに、2人の死者に説教ごかしの談話を発表した」と即時辞任を求める糾弾文を発表した。【倉重 篤郎】
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